短歌便り−2「夏来る」
「谷戸渉る風は若葉の香にみちて時鳥啼く夏は来にけり」
「五月雨の暗き葉陰に輝きて獣眼のごとき椿の実あり」
「山茶花の若葉に連なる朝露は首飾りのごと陽に透き光る」
「荒梅雨にしとどに濡れし白き百合露の重みに伏して崩れぬ」
「潮風は磯の香に充つ見上れば空は水色梅雨は明けしか」
「暁の夢か遠啼く時鳥覚めての後も胸に響す」
「遡り来し稚鮎の群れは水底に光集めてときに燦めく」
「雷雲は見る間に湧きて睨みあう力士のごとく夏空に屹つ」
「夏逝くか全山覆い次々とうねり波なすひぐらしの声」
夏が来ると、海と里山に囲まれた鎌倉の谷戸には時鳥が啼き、夜には蛍が舞う。里山からの清流には稚鮎の群れが遡上し、それを狙って翡翠や白鷺も飛来する。
以 上
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