短歌便り-5 秋立つ
秋立てど暑き朝に見上ぐれば水色の空に鰯雲流る
浮雲を茜に染めて沈む陽に金と輝き翔ぶ一機あり
腹ばえば干せし布団に陽の匂い秋天高く一片の雲
遥かより祭り囃子の音を乗せて秋の風吹き木犀薫る
逆光に翅きらめかし一斉に蜻蛉の群れは夕陽に対す
光りつつ谷戸の稲架木の上に翔ぶ赤き蜻蛉は数かぎりなし
昨日まで群れいし鮎は影もなし秋の夕陽に水底の透く
秋天に百舌鳥の高音の響もして谷戸の棚田は稲の香に充つ
今年の夏は異常気象とて、何時秋が来るかと心配していたが、空の高みには秋の雲が流れていた。谷戸の稲田には赤とんぼが無数に翔び、何時の間にやら鮎の姿は消え、百舌鳥の声が響いている。季節はまぎれなく巡っている。
以上
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