氏 名
豊田 乾
 所 属
東燃関東地区OB会
 掲 載 日
平成22年10月22日
表 題
 短歌便り―6
本   文 


  短歌便り-6 秋深む

   未だ青く固き蜜柑に爪立つれば秋の香りのほとばしり出づ

   秋日和日向ぼこすれば遥かより運動会の歓声(こえ)時折聴こゆ

   (ゆうかげ)に一樹の銀杏照り映えて風なきままに黄葉(もみじば)の散る

   秋の陽を背に受け庭の雑草(くさ)を抜く酔うがごとくに濃き香り立つ

   茄子紺の裏富士の上に金色の縁どりをせし茜雲浮く

   フランスの旧きシネマに妻は泣く秋の長雨の降り続く午後

   秋雨の(あした)に友の訃報あり南天の実は(くれない)を増す

   陽に映えて火の色のごとき(はぜ)紅葉(もみじ)冬近き山の紅の(いろど)

   ほそぼそと鳴き続けたる蟋蟀(こおろぎ)も今宵は鳴かず月冴え返る

 季節の終わりはなんとなく淋しい。とくに、秋の長雨が続き、友人知人の訃報などがあるとなおさらである。それでも秋日和の青空、里山を彩る紅葉、柿、栗、蜜柑など心を慰めてくれるものも多い。

以上     

                         
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