短歌便り-10 「友」
たちまちに悪童面の現れぬあだ名合い呼び眸交わせば
宴には故郷の方言飛びかよい友らと還る少年の日々
病む友に同窓会の知らせ出す命迫れることは知りつつ
革命を夢見し友と並び立ち冬の紅葉を黙して眺む
地位もなく歓迎会もなき帰任なり友注ぐ酒の胃に暖かし
亡き妻と夢に会えるが楽しみと語りし友の遺影は笑みぬ
通夜の席脚元に来る秋の蚊を旧友と思いて血を吸わせおり
街角に亡友の好みし唄流れその一節を口ずさみみる
友逝けり呆然たる眼に遠方の冬の花火は音無く開く
友ねむる丘辺に立てば桃の花の霞の底に盆地はけぶる
久しぶりの故郷の友達との会合、学校や職場の仲間達の同窓会は楽しい。久しぶりに会う旧友など、お互いに歳をとり、一見したばかりの時はどこの爺さんかと疑うが、方言などで会話を交わすうちに昔の顔に戻るから不思議である。
しかし、時間は残酷に経ち、友との別れが訪れる。その折に詠んだ歌を詠みかえすと、友との想い出はまざまざと脳裏に蘇る。
以 上
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