短歌便り-12(音楽)
想い出で頬の赤らむ記憶あり昔流行りし唄に出会いぬ(テネシーワルツ)
夕暮れに拙き音色流れいる少年が独りたて笛を吹く
何を思い喇叭を吹くや青年は夕陽に向かい抗うごとく
眼閉じ楽に浸れば野を渉る秋の風あり露散らしつつ(ショパン幻想即興曲)
ヴァイオリンの暗き調べに籠りたり遣りどころなき深き悲しみ
(シベリュース バイオリン協奏曲)
かかる幸なお幾たびやと妻の問う天井桟敷にモーツアルト聴く
なお胸に響す音色を愛しみつ群衆の中黙して歩む
カザルスは祈るがごとく奏でたりカタロニアの古歌その鳥の唄を
砕け散る波涛のごとく燦めきしピアノの響き吾を圧し包む(楽友協会)
音楽は若いころからの趣味である。学生時代にはコーラス団に入り、乏しい生活費を節約し、渋谷の音楽喫茶「ライオン」に通いつめた。
クラシック、民謡、ポップス、シャンソンから演歌まで、良い曲なら何でも好きだが、ウィーン国立歌劇場で「トスカ」を聴いてから、芝居地味大げさ故にあまり好きではなかったオペラにはまってしまった。
オペラの良し悪しは歌手とオーケストラの巧さだけでなく、舞台装置、劇場の伝統など、無数の要素に支えられている。ミラノのスカラ座、ウィーン国立歌劇場、NYのMETなどの本場で聴くオペラは引っ越し公演とは一味違う。
音楽や絵画などの芸術に触れた感動は短い詩形の短歌では到底表現できないが、少しだけ詠った腰折れ短歌をご披露する。
以上
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