短歌便り-14
春雨に濡れ黒みたる田の畦に陽のさし来たり陽炎の立つ
海鳴りの遠く聴こゆる春の宵明き灯ともし江の電の行く
梅薫り海望む丘を客三人乗せたるバスが睡たげに行く
わかめ干す春の浜辺に汐さして匂うばかりに丸き月出ず
春の陽を浴びつつ庭の雑草をひく背の温みに心安らぐ
昨夜の雨に散り敷く辛夷の花びらの白のなごりを惜しみつつ歩む
春陽さす長閑けき街の静けさを切り裂くごとく救急車過ぐ
友眠る丘辺に立てば桃の花の霞の底に盆地はけぶる
近ずけば薔薇の新芽のありまきは緑に透きて翅を震わす
地震、大津波、原発事故、中近東騒乱に内外は騒然としている。それでも、外に出れば、草木は芽ぶき、季節は確実に巡っている。
被災者の一日も早い立ち直りを祈り、信じる。この状況を歌にするにはなお日時を要する。
以 上
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