氏 名
豊田 乾
 所 属
東燃関東地区OB会
 掲 載 日
平成23年03月31日
表 題
 短歌便り-14
本   文 


   短歌便り-14

 春雨に濡れ黒みたる田の畦に陽のさし来たり陽炎(かげろう)の立つ

 海鳴りの遠く聴こゆる春の宵明き灯ともし江の電の行く

 梅薫り海望む丘を客三人(みたり)乗せたるバスが睡たげに行く

 わかめ干す春の浜辺に汐さして匂うばかりに丸き月出ず

 春の陽を浴びつつ庭の雑草(くさ)をひく(せな)の温みに心安らぐ

 昨夜(よべ)の雨に散り敷く辛夷(こぶし)の花びらの白のなごりを惜しみつつ歩む

 春陽さす長閑けき街の静けさを切り裂くごとく救急車過ぐ

 友眠る丘辺に立てば桃の花の霞の底に盆地はけぶる

 近ずけば薔薇の新芽のありまきは緑に透きて翅を震わす

 地震、大津波、原発事故、中近東騒乱に内外は騒然としている。それでも、外に出れば、草木は芽ぶき、季節は確実に巡っている。

 被災者の一日も早い立ち直りを祈り、信じる。この状況を歌にするにはなお日時を要する。

                            以 上

                         
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