氏 名
大峯 登
 所 属
東燃和歌山OB会
 掲 載 日
平成23年04月11日
表 題

 海南市の文化財案内 藤白山 延命院 地蔵峰寺

本   文 


 地蔵峰寺は海南市下津町橘本の藤白峠に建てられている天台宗の寺である。この寺の本堂と「峠の地蔵さん」と呼ばれる本尊の石造地蔵菩薩坐像は国の重要文化財に指定されている。

 本堂はさほど大きくはないが、建築様式は禅宗様式で小さいながらもバランスのとれた重厚な感じがする建物である。創建時は真言律宗であったが、後に真言宗に転宗、更に徳川頼宣公の紀州入りに合わせて天台宗となり現在に至っている。

 石造地蔵菩薩坐像は、堂内の内陣一杯に安置されている高さ3.17米の巨大な泉州砂岩で造られた石仏である。この石仏は元亨3年(鎌倉後期)奈良 東大寺の復興時に活躍した石大工薩摩権守行経の作で、その卓越した技量は精微で、お顔の表情はおだやかですばらしい。

 この寺は熊野参詣道の塔下王子跡でもあり、この寺の背後の高みは「御所の芝」と呼ばれ、ここからは眼下に黒江湾、和歌浦、雑賀崎、片男波の砂嘴、紀三井寺、吹上の浜、淡路島、四国と眺望でき、熊野路一の絶景と言われている。その昔熊野に参詣する上皇、貴族の中にはここに仮宮を建ててこの絶景を賞美したと言われ、これが「御所の芝」の名の起こりである。

 そしてこの峠ではもうひとつの歴史上の大きな出会いがあった。それは浄土真宗 本願寺8世蓮如上人と冷水浦の喜六太夫(後の了賢)との出会いである。この出会いで喜六太夫は蓮如によって浄土真宗への教化を受け、以後喜六太夫は浄土真宗門徒「了賢」として浄土真宗の布教に一身を捧げます。これが紀州門徒の始まりであり、これが以後の雑賀党の蜂起や大阪石山合戦等 浄土真宗と織田信長との壮絶な戦いに繋がってゆく訳です。

 今この御所の芝には蓮如上人と喜六太夫の運命的な出会いを記念した記念碑が静かに立っています。
                      紀州語り部  大峯 登
 

                                    以上

地蔵峰寺
地蔵像
御所の芝(1)
御所の芝(2)

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