氏 名
豊田 乾
 所 属
東燃関東地区OB会
 掲 載 日
平成23年06月07日
表 題

 短歌便り-17(春から初夏へ)

本   文 


 落ち椿の紅きを載せし花筏流れによどみ春は爛けゆく

 まだ(やわ)(あか)き棘もち薔薇の芽は艶やかに伸ぶ五月の闇に

 満開の薔薇は枝垂(しだ)れて垣を覆い朝日に映えて花の滝なす

 咲ききりて命絶つがに白薔薇は花蕊を残し一気に崩る

 束の間に今年も再び春去りぬ想い遂げざる恋のごとくに

 パンジーは命乞うがに風に揺れ抜く手を留めしばし眺むる

 幽かなる熊蜂の羽音夕闇におののくごとく藤房の揺る

 針のごとき蟷螂(かまきり)の仔は斧かざし葉先と共に風に揺れおり

 東日本大震災以降、なんとなく歌を詠む気にもならず日を過ごしていた。しかし、原発事故も未だ終息していないのに、一年間丹精して育ててきた薔薇は季節を違えず色とりどりに咲き始めてくれた。
 薔薇見物に訪れる近隣のご婦人がたに薔薇を剪ってさしあげ、喜んでいただき、よもやま話をするのは例年の春の楽しみの一つである。特に、紅いつる薔薇「春風」が石垣一杯に枝垂れて、あたかも花の滝をなすように咲いてくれるのは見事である。
 五月連休明けから六月中旬までの薔薇の季節が終わると、時鳥(ほととぎす)の啼く初夏が訪れる。

                                   以上

薔薇の花の滝 (部分)

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