短歌便り-19 (盛夏)
銀箔のごとく朝陽に煌めきて椿の若葉は夏風に揺る
汚れ増す川に今年も鮎
遡
る道行く人に声かけ示す
動乱の世界をよそに小さくも紅鮮やかに夏の薔薇咲く
一輪の夏ばら高くセビリアの舞姫のごと
炎
の色に咲く
南国の娼婦のように
艶
めきて宵闇に揺れる
凌
ぜん
花
海風に真向かい手挙げ
眼
閉じ鴎となりて海原を舞う
夕されば酷暑に喘ぐ老い二人に汐の香乗せて海風の吹く
騎士のように鎧まといし小蜥蜴が青き尾残しあたふたと消ゆ
幼らの歓声耳によみがえる
昨夜
の名残りの花火の屑に
炎昼の草木も枯れし石庭に蝉の声しげく方代忌来る(瑞泉寺)
二人並び
雑草
むしりせし一日を珠玉のように愛しみ睡る
子供の頃は夏休みがある。川で魚釣りや水遊び、林でかぶと虫、蝉や蜻蛉を追いかける毎日が楽しく、夏は大好きだった。
老いたる今は暑い夏、寒い冬は苦手になった。それでも、朝夕に磯の香をのせて吹く涼しい海風は気持がよい。岸壁に立ち、海風を胸一杯に吸い、目を閉じると、自分が大海原を舞う鴎やヨットになった気分になる。
少なくなったとは言え、小川には稚鮎の群れが遡上してくる。お節介爺さんは自分だけで楽しんでいるのは勿体ないと、見ず知らずの他人にも声をかけ、稚鮎の遡上を教えるが、若い人には興味がないらしく怪訝な顔をされることが多い。
以 上
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