短歌便り-No.20(旅)
海望む岬の丘の啄木の墓石は温し春の陽集め
啄木を詠うガイドは函館を住みよき街といくたびも説く
はるばると金毘羅宮に登り來ぬ孫にと一つ黄の守札を買う
夕暮れて残り蝉鳴く桂浜竜馬の像は沖見すえ立つ
冷えびえと通り雨過ぎ水路には鯉群がりて丸々と肥ゆ(津和野)
日は暮れて仙崎の街にひと気なし少女みすずの隠れいるごと
(金子みすず記念館)
乙女らの白き踵の後追いて夏の砂丘を喘ぎつつ登る
(鳥取砂丘)
夜祭の山車曳く娘らの掛声高し冷たき雨を撥ねかえすごと
(秩父夜祭)
能登岬の灯台白し海風に逆らうごとく鳶一羽舞う
旅はよし家はなおよしゆるゆると手足伸ばして大の字に寝る
歳を重ねるたびに脚腰も弱り、空路十数時間もかかる海外への個人旅行は次第に難しくなった。
しかし、国内にはまだ訪れていない多くの名所旧蹟がある。個人旅行に比べると、印象は薄くなるが、格安の団体旅行も増えてきた。団体旅行では重い荷物を運ばずに済むし、宿の予約もしなくてよいのが有難い。
旅のメモ代わりに作った歌で駄句拙作ばかりだが、心に残る旅の一瞬を詠んでいるせいか、それぞれの歌をよむと、懐かしい旅の想い出が胸一杯に鮮やかに蘇る。
何よりも夫婦二人で旅行できる現在が有難い。
以 上
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