囲碁を覚えて半世紀になり、ヘボ碁を楽しんでいますがあの頃の事が思い出されます。
10代の頃でした。私の友人が囲碁の相手をしていたQ君の事です。彼(Q君)は小児麻痺のため、手足が不自由でした。当時、身体障害者は、ほとんど外出しませんでした。
友人は進学のため東京に行くことになり、「川崎。Q君の相手をしてやってくれ」と言われ、囲碁はほとんど判りませんでしたが、承知しました。
彼(Q君)は、母親と二人暮らしで、私が行くと非常に喜び少し顔をゆがめ、不自由な指で碁石を握り、よく二人で打ったものでした。
お母さんは上品な方で、二人が碁を打っていると横に座り、静かに息子の表情を見ていました。お母さんは「祭りが嫌いだ」と言っていました。「着飾った若い人が窓外を通るのをさびしげにながめている息子を見るのが辛い。」私は、祭典時、特に都合を付け、彼の所へ行きました。
その後、彼の土地が区画整理地区となり、遠方へ引っ越され、彼と碁を打つ機会はなくなりました。しばらくして、彼が亡くなったとの報を受け、葬儀に参列しました。
お母さんが私の手を握り、「健ちゃん、本当にありがとう。」と涙を流され、私は、胸が詰まり、声が出ませんでした。
時が経ち、彼の地を訪れましたが、大きなビルが建ち昔の面影はありませんでした。
やさしかったお母さんも、あの世で息子さんと楽しく過ごされて居る事と思います。
今後、囲碁を通して色々な方と元気に楽しく人生を送りたいと思っています。
以上
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