氏 名
豊田 乾
 所 属
東燃本社OB会
 掲 載 日
平成24年05月08日
表 題

 短歌便り-26  亡き犬を偲ぶ

本   文 


短歌便り-No.26(亡き犬を偲ぶ)

 知らぬ間に脚元に来てうずくまる老いたる犬は淋しくもあるか

 眠りつつも犬は夢見て争うや手足震わせ小さく唸る

 春雷におののく犬をかたく抱き頭撫でれば震えのとまる

 ヨロヨロと歩む老犬に従いてトボトボ歩む老いたるわれも

 病む犬は歩みを(とど)め苦しげに上目使いにわれを見上げる

 眼(まなこ)とじ病み伏すのみの老犬に頬よせ愛しむ生命(いのち)(ぬく)

 父母の身まかりし時より激しくも涙あふれぬ愛犬の死に

 あの角にこの電柱に尿(いばり)せりとゴン太を偲びつつ妻と歩みぬ

 おきまりの食卓の椅子に陣取りておこぼれを待つ犬のありしに

 亡き犬に似たる散歩の犬に遭う妻は駆け寄り愛しみて抱く


 愛犬ゴン太が死んでから三年も経ってしまった。墓標の白ばらも大きく育ち、毎年沢山の花をつけてくれる。

娘からのメールで、テレビの連続ドラマ「マルモの掟」にゴン太と瓜二つのミニチュアーシュナウザーが出演していることを知り、毎週テレビの画面で会うことができた。

今でも毎日の散歩や食事のたびにゴン太を思い出す。同じ犬種の犬をまた飼いたいが、我々も老齢なので犬より先に逝く可能性もあり、面倒を見きれぬので飼うのは断念した。

最初の七首は、短歌便り-7「愛犬ゴン太」に投稿させていただいた頃に詠んだ歌で、最後の三首だけが最近作である。