ここ20年近く、正月三が日に近所の曹洞宗K寺での早朝の参禅を恒例にしている。
昨年、地元シニア大学の友人に勧められて、その模様を詩に表し「さいたま市民文芸」に応募したところ入選した。いかにも説明調で、文章にふくらみがなく汗顔の至りであるが、新春の話題としてご笑覧いただければ幸いである。
「新春参禅」
未だ明けやらぬ道の奥に
本堂の灯りが浮かぶ
道の両端の家々は
大晦日の名残か 夢の中
闇と寒気を分け 山門へと歩む
格子戸を開け本堂に入る
そこは釈迦牟尼仏のおわす世界
支配する空気が わずかに重い
自らの個を消し その中に溶け込む
作法に従い 明障子を前に座る
途端 亡き人の顔々が浮かんでくる
下桟に目を落とし 気を整える
やがて静寂の中 幹線道路を走る車の音が
澄んだ響きで耳に届く
時至って放禅の太鼓、魚板、鐘の音が
堂内の空気を震わせる
ふっと息を吐き 現実の世界に戻る
世の安寧を祈りつつ 座禅を解く
(さいたま市民文芸第11号入選)
以上