短歌便り-31(新年&囲碁)
「何となく今年はよい事あるごとし元日の朝晴れて風無し」啄木
「去年今年貫く棒のごときもの」虚子
*敗れたる棋士が嘆きて酔へるさま読めば悲しき繰り返し読む「月」
*寝むとして瞼にたどる昼の碁や百手前後に怯みのありし「雷」
*存分に打ち回ししが一石の打ち過ぎありて全局を失す「雷」
*読み切らむ根気続かず成り行きのままに打つ石一瞬に崩ゆ「雷」
*一手勝ちになるや攻合読み疲れ甘く打ちては悔いを残しぬ「雷」
*時至らば潮満つるがに寄せなむと中盤しばし石厚く堪ふ「雷」
*決断に指撓ふなり黒模様深く打ち込む一つの白石「雷」
*読み浅く打てる一手に全局の縺れに縺れしかの碁ならずや「雷」
*一瞬のこころゆるびに大石のいまや追はれて地の失せむとす「拳」
老化現象のためか歌を詠むのが億劫となり、短歌便りも怠けてしまいました。
あまりご無沙汰するのも申しわけなく、他人の佳歌を紹介するのも一法と、新年と囲碁の短歌と俳句を紹介させていただきます。
*印は私の短歌の師匠である来嶋靖生先生の作で、括弧内は歌集名です。
囲碁の川柳は多いが、短歌は少ないので、多少とも囲碁を嗜む方々には面白いと思います。棋力もすっかり落ちてしまいましたが、そこは歳のせいでやむをえずと割り切り、老妻と二人で毎夜ネット碁を楽しんでいます
以上