東燃本社OB会員の小牟田 康彦さんが、この程サマセット・モームの短編集を翻訳、出版したので紹介したい。
サマセット・モームというと、1960年代の大学入試の英文解釈問題によく採用され、そのため、参考書には、彼の小説の一節が必ず取り上げられていたことを、ご記憶の方が多いと思う。サマセット・モームは、「人間の絆」や「月と6ペンス」といった小説が有名だが、一方で、短編に優れた作品が多い。
小牟田さんは1964年から1993年まで30年間、東燃や東燃化学に勤務されたあと、2011年まで学習院大学や広島国際大学で英語の教授を務められた。この間「ゴルフ英会話をマスターしよう」(日本経済新聞出版社、2010年)等を書かれたほか、数冊の翻訳物を出されている。
この度、小牟田さんはモームの作品のなかで評判の高い「TheTrembling of a Leaf ; Little Stories of the South Sea Islands」「一葉の震え;雨ほか南海の小島にまつわる短編集」(近代文藝社)を、翻訳出版されました。
この本は8つの短編から成り立っているが、日本にはこれまでこの全てを1冊の形で翻訳発行されたものはなかった。また、その一部の翻訳がなされていても、50年以上昔のもので、翻訳そのものが陳腐化していた。小牟田さんはそこに着目し、新たに翻訳に取り組んだのである。
翻訳というのは単に英文を日本語化するだけでなく、日本文学化することが翻訳者の役割であると考える。
小牟田さんの素晴らしい文学的素養の一端を取り上げてみよう。
「The Trembling of a Leaf」は、通常「木の葉のゆらぎ」と紹介されているが、小牟田さんは、「一葉の震え」としている。いかに、小牟田さんがこの本を読み込んで適切な訳をつけているか分かると思う。
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近況にかえて 小牟田 康彦
昨年8月に早期胃がんで胃を三分の二切りましたが、その後は順調に回復し、先日も藤村卓也さんらを中心とした白河高原CCの親睦ゴルフゴンペにも参加しました。
東燃を早期退職してしばらくは苦労しましたが、大学における英語教育が第二の人生となり、最後は広島国際大学に70歳まで勤め、2011年3月に退職しました。以後、社交的な交わりの相手は圧倒的に元東燃の先輩知己が主で、お付き合いいただいていることを有難いことだと感謝しています。
普段は、埼玉の家で英語の文芸作品の翻訳に取り組んでおります。今回藤村さんに紹介していただいたサマセット・モーム原作『一葉(ひとは)の震え』は、大学時代の恩師ほか有名な評論家や大学教授の部分訳がありますが、それにもかかわらず拙訳を世に問いましたのは、それなりの社会的価値があると信じているからです。お手に取って頂けると幸いです。
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以上