人を寄せ付けない自然が日本にはまだまだ一杯ある。登山道、作業道や巡視路を歩んで山頂に楽々達してもどこか満たされない気持ちが残る。温暖な地方の山々は植物に占拠され、高木の下には低木が、低木の下には潅木が、潅木の中には蔓や笹、薄が茂る。そんな薮森こそ獣、鳥や虫の自由世界だ。薮山から見下ろす沢にはヤマメやイワナがチラリと見えたりする。
しかし高年齢の山好きがこんな薮世界に入るには残雪を利用するしかない。雪崩が納まる4月は小鳥の囀りを聞きながら雪堤や雪田を辿って人を寄せ付けない秘峰に登り、雪上で至福の時を過ごすことができるのが例年の習いだった。
ところが、この冬のシベリヤ将軍は例年の半分から三分の一しか雪を積もらせてくれなかった。4月初めまでには雪堤がもう尾根の下にずり落ちてしまい、薮が出ている山々が多かった。雪の重みで伏せている低木・潅木・笹が5月連休には立ちあがり、予定の何倍もの時間を費やす過酷な薮漕ぎを強いて、結局、頂上未達で撤退させてしまうだろう。
会員の皆様には物好きと思われるかも知れないが、日本の自然を満喫するためにリタイヤ後の気楽で自由な時間を残雪期の登山に使っていると認めてくだされば幸いです。
[山行]
3/22~24 美濃俣丸(みのまたまる)・三周ケ岳(さんしゅうがたけ)=福井県・岐阜県
4/ 5 ~ 7 威守松山(いもりまつやま)・檜倉山(ひのくらやま)=新潟県・群馬県
4/11~13 徳網山(とくあみやま)・袖朝日岳(そであさひだけ)=新潟県・山形県
写真説明
写真-1 美濃俣丸、頂上から笹ヶ峰方向を望む(美濃俣丸にて退却)
写真-2 美濃俣丸、密薮に相棒が突入
写真-3 三周ケ岳、三周ヶ岳への笹薮夏道を見つけたが
写真-4 威守松山、威守松山から谷川岳~巻機山主稜線(檜倉山にて退却)
写真-5 徳網山、新潟山形県境尾根を薮と格闘しながら進む
写真-6 徳網山、袖朝日はこれだろうか、薮が出て(袖朝日岳を断念)
以上