和歌山県海南市黒江の漆器は、全国の漆器産地(会津、山中、越前)と並んで有名である。毎年8月14日に黒江の町で「下駄市」と呼ぶ夜店が催される。
室町時代に近江の木地師が伝えたと言われる漆器造りは、明治の後半で最盛期を迎える。漆器製造に携わる人たちは5000人に達したという。
全国から集まる職人は2000人を超え、いつの頃からか8月の盆の藪入りには新しい下駄を履かせて帰郷させる風習が定着した。「下駄市」は下駄の消費を見込んで数十店の下駄屋が店を出すようになったのが始まりと言われる。
またこの下駄を履いて盆踊りにも参加したという。黒江には市指定無形民俗文化財の「つつてん踊り」があり、この日も保存会のメンバーで披露された。
三味線の“つつてん・つつてん”の単調なメロディーで、歌詞は近江の木地師たちの望郷の歌であると紹介されていた。
昔は狭い路地しかなく輪になって踊れないため「畳半畳の踊り」と言われ、踊り手は列に並び、殆ど移動することなくその場で踊り続けたという。
約150店の夜店の中を老若男女が、食べたり談笑したり催し物を見物して歩く。下駄の店を探すと2店が出店していた、少し寂しい思いと時代の移り変わりを感じながら、たこ焼きとお好み焼きを買って家路についた。
写真説明
写真―1 下駄のモニュメントに子供たちが集まる
写真―2 海南中学のブラスバンド部の演奏
写真―3 忍(しのぶ)隊による南中ソーランの演技
写真―4 保存会のメンバーによる「つつてん踊り」
写真―5 下駄を品定めするお客さん
写真―6 会場風景(全体の1/2)
以上