2022年3月11日帝国ホテルにて、中原元社長のお別れの会が開かれました。青と白に統一された会場には多くの参列者が集い、ありし日の温顔が微笑む祭壇に献花をいたしました。一面に張り巡らされたかつての東燃時代の写真の数々は過ぎし日を思い起こさせるものばかり。懐かしい上司や同僚の方々と「改めて中原さんがお引き合わせくださった」と旧交を温める姿があちこちに見受けられました。
かつて伊豆熱川の海を見晴るかす高台に、中原元社長が主導されて「滄海楼」という会社の保養所が設けられました。「歩出夏門行」(曹操)という漢詩にこうあります。
東臨碣石 東のかた碣石(けっせき)に臨み
以観滄海 以て滄海を観る
<中略>
幸甚至哉 幸ひ甚だ至れる哉(かな)
歌以詠志 歌ひて以て志を詠ぜん
青い大海原を臨み自然の摂理を味わいつつ人生の幸いを歌に詠うという内容です。私の勝手な憶測ではありますが、「滄海楼」の名前には、希代の経営者として厳しく辣腕を揮われながら、社員に対して温かいお心をお寄せくださっていた中原元社長のお気持ちが込められているものと拝察しておりました。
溟海に端然と佇まれているかのような祭壇上の中原元社長に深い感謝と惜別の思いを胸に会場を後にしました。
以上